FREE AREA1
コチラは宇宙世紀、1st・z・CCA以降など。
メインはシャア様、セイラさんと友人兼恋人のようなアムロ、シャア様の愛犬が登場してます。
基本はほのぼの、偶に年齢制限有り。温いですが一応忠告。
メインはシャア様、セイラさんと友人兼恋人のようなアムロ、シャア様の愛犬が登場してます。
基本はほのぼの、偶に年齢制限有り。温いですが一応忠告。
一人きりで夜空を眺めていると、よく知った気配と共に傍に椅子が置かれた。
振り向くとシャアの青い目は自分を覗き込んでいた。
「ありがとう」
「どう致しまして」
遠慮なく持ってきてくれた椅子に腰掛け、首を逸らして空を見上げたアムロの隣にシャアも腰を下し、一心不乱に空を見つめるアムロに視線を移す。
「いくら眺めても月は見えんよ」
長い脚を組み夜空を見上げるシャアは、宇宙に還りたいと願うのだろうか。
モビルスーツを駆る伝説のエースパイロット、シャア・アズナブル。
軍服を脱ぎ捨てた彼は、モデルか役者と偽っても通用するくらいに洗練された雰囲気を纏って静かに存在する。
隠しようのない存在感は、見る人が見れば一目瞭然だろう。
アムロの心配はどこぞの機関にシャアの存在を知られることである。
軍人特有の猛々しさはないが、物腰の柔らかな中にも機敏さは残されており、元軍人であるのは歩き方ひとつでも解ってしまう。
(もし、シャアの生存が知れたら)
何度も自答した答えを、もう一度心の中で繰り返す。
(俺が護るさ。もう二度と、自分の意思に反した行動を取らせたりしない)
エゥーゴの代表となるまでのシャアの苦悩と、なってからの苦悩を知るアムロには、望まない運命を受け入れたシャアの自己犠牲が納得いかない。
(そんなにダイクンの血は大切だったのか、シャア?それで間違った方向に活路を見出していたら、本末転倒だよ…)
ネオ・ジオン総帥として君臨するシャアに、アムロはいつもこう思っていた。
(人は自分の人生を歩んでいいんだ。望んでも無い遺産を受け継がなくても、くそ真面目に生きなくてもいいんだよ、シャア)
モニターや画像に映るシャアには、いつも憂いが纏わりついていた様に思う。
それこそ、今のシャアとは天と地ほどの差があると言って過言ではなかった。
戦闘とは無縁の穏やかな生活は、シャアの刃のような鋭さを鈍くさせている。
だが根っからのスペースノイドであるシャアが、今の生活を厭わない可能性も無くはないのだ。
アムロもまた、無重力の世界を渇望する自分がいることを自覚していたから、尚更そう考えるのだろう。
「なぁシャア…俺さ、時々無性に宇宙に上りたくなるんだ。何ていうか、コロニーの人工重力から解き放たれたいっていうのかな、そう思う時がある」
深く椅子に身を沈ませたアムロは、自嘲気味に空から視線を動かさずに呟いた。
一度無重力を味わってしまうと、例え人工といえども重力に支配された地上の生活が、煩わしく思われてくる。
引力を振り切って空へ上る瞬間の、体に絡みつくGを振り解く瞬間が好きだった。
地上に縛り付ける一切のモノから、心も体も解き放たれる開放感が好きだった。
「ああ…それは私も同じだ、アムロ。この生活に不満はないが…私も無性に宇宙に上りたくなる。物足りないのかもしれんな…」
「貴方はずっと戦場暮らしだったからな…懐かしいのは解るが、戻りたい?」
伺うように覘きこむと、シャアはふと微かに笑って首を横に振った。
「……いや、それはない。私が宇宙に上れば、又周囲を騒乱に巻き込むことになる。ジオンの赤い彗星とキャスバル・レム・ダイクンは死んだのだ、それは私の願うところではない。
…だが……ああそうだよ、アムロ。君の言う通りだ、私はあの閃光に満ちた世界が懐かしい」
シャアは苦笑を浮かべた口元にカップを持って行くと、冷めてしまった紅茶を一口含んだ。
喉を落ちる液体は、微かな苦味をもってシャアの気持ちを代弁するかのようだった。
「すっかり冷めてしまったな。丁度いい、淹れ直すとしよう」
逆行を背負いセイラが茶器を持って出てきたのを機に、シャアは自ら紅茶を淹れ直し始めた。
さまになっている姿が可笑しいと、アムロがニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて見ているのに気付き、シャアは僅かに片眉を上げてアムロを睨む。
「何が言いたい?」
「いや?案外似合ってるな~と思って。そうだシャア、いっそのことギャルソンとかしてみたらいいんじゃない?」
アムロのとんでもない提案に、セイラは飲みかけの冷めた紅茶を噴出し、シャアは口をポカンと開けてアムロを見つめた。
その目は(何を言うのだ!)という非難に満ち溢れている。
「ア、アムロ!貴方凄い事言うのね…!」
セイラは口元をナフキンで押さえ乍ら、懸命に笑いを堪えていた。テーブル上の、ぐっと握った拳が正直にそれを物語っていた。
「だってさ、こーんなイイ男が『いらっしゃいませ』とか言ってにっこり笑ったら、女性客増える一方じゃないか?ねぇセイラさん、そう思うでしょ?」
「私に振らないで…!答えられるワケないでしょう!?…ぷぷっ」
想像してしまったのだろう、セイラが耐え切れず笑いだした。
妹の様子を憮然とした面持ちで見つめ、シャアはこれみよがしに地球の海よりも深い溜息をつく。
アムロとセイラの笑い声が、一頻り静かな湖畔と木々の間を通り抜け、風のない穏やかな湖面を渡ってゆく。
明りの灯る庭先では、眉間にくっきり皺を寄せたシャアが、無言で其々のティーカップに淹れ立ての紅茶を注いでいた。
紅茶とアップルパイの皿をアムロの前に進めると、シャアは恭しくアムロに一礼してみせた。
「…どうぞお客様。冷めないうちにお召し上がり下さい」
耳元で、低く艶のある声で甘く囁くように言うと、いきなりアムロは首まで真っ赤に染まった。
固まってしまったアムロを横目で見遣り、シャアはほくそ笑む。
「如何いたしました?お顔が朱いようですが、ご気分でも」
「…悪くない!ごめん!もう言わない!」
耳を押さえ、シャアから顔を背けるアムロの心境は。
(ななななんて声出すんだよ、シャアの阿呆!あ、あんな腰にクる声で「いらっしゃいませ」なんて言われたら、女性どころか男まで落ちるって!…態とやるってのがシャアのヤラシイとこだよなァ…!)
そおっと振り向けば、してやったりとにこやかに微笑むシャアと、苦笑するセイラ。
「お茶が冷める。冷めた紅茶は不味いぞ?」
「そうよ、アムロ。お腹空いてるでしょ?パイだけで足りないなら何か作りましょうか?」
「い、いや結構です…。ああもう、貴方って以外に人が悪いんだね、シャア」
悔し紛れに呟けば、
「おや?知っていると思ったよ、アムロ」
という何とも人を喰った言葉が返ってくる始末で、アムロはシャアに負けない溜息をつくしか術がなかった。
そんなアムロの様子を見つつ、シャアは星の海に浮かぶ月を思う。
(どうか。愛する人々が不幸な死を迎えないように。もう二度と、私の為に辛い思いをしないように)
月面に人類が進出して久しいが、古の人々が月に願いをかけたようにシャアも見えない月に向って願った。
シャアにとって初めてといっていい願いは、大切な人を不幸にしないこと。
それはすなわち、シャアが誰よりも大切に思うセイラとアムロへの愛情に他ならなかった。
振り向くとシャアの青い目は自分を覗き込んでいた。
「ありがとう」
「どう致しまして」
遠慮なく持ってきてくれた椅子に腰掛け、首を逸らして空を見上げたアムロの隣にシャアも腰を下し、一心不乱に空を見つめるアムロに視線を移す。
「いくら眺めても月は見えんよ」
長い脚を組み夜空を見上げるシャアは、宇宙に還りたいと願うのだろうか。
モビルスーツを駆る伝説のエースパイロット、シャア・アズナブル。
軍服を脱ぎ捨てた彼は、モデルか役者と偽っても通用するくらいに洗練された雰囲気を纏って静かに存在する。
隠しようのない存在感は、見る人が見れば一目瞭然だろう。
アムロの心配はどこぞの機関にシャアの存在を知られることである。
軍人特有の猛々しさはないが、物腰の柔らかな中にも機敏さは残されており、元軍人であるのは歩き方ひとつでも解ってしまう。
(もし、シャアの生存が知れたら)
何度も自答した答えを、もう一度心の中で繰り返す。
(俺が護るさ。もう二度と、自分の意思に反した行動を取らせたりしない)
エゥーゴの代表となるまでのシャアの苦悩と、なってからの苦悩を知るアムロには、望まない運命を受け入れたシャアの自己犠牲が納得いかない。
(そんなにダイクンの血は大切だったのか、シャア?それで間違った方向に活路を見出していたら、本末転倒だよ…)
ネオ・ジオン総帥として君臨するシャアに、アムロはいつもこう思っていた。
(人は自分の人生を歩んでいいんだ。望んでも無い遺産を受け継がなくても、くそ真面目に生きなくてもいいんだよ、シャア)
モニターや画像に映るシャアには、いつも憂いが纏わりついていた様に思う。
それこそ、今のシャアとは天と地ほどの差があると言って過言ではなかった。
戦闘とは無縁の穏やかな生活は、シャアの刃のような鋭さを鈍くさせている。
だが根っからのスペースノイドであるシャアが、今の生活を厭わない可能性も無くはないのだ。
アムロもまた、無重力の世界を渇望する自分がいることを自覚していたから、尚更そう考えるのだろう。
「なぁシャア…俺さ、時々無性に宇宙に上りたくなるんだ。何ていうか、コロニーの人工重力から解き放たれたいっていうのかな、そう思う時がある」
深く椅子に身を沈ませたアムロは、自嘲気味に空から視線を動かさずに呟いた。
一度無重力を味わってしまうと、例え人工といえども重力に支配された地上の生活が、煩わしく思われてくる。
引力を振り切って空へ上る瞬間の、体に絡みつくGを振り解く瞬間が好きだった。
地上に縛り付ける一切のモノから、心も体も解き放たれる開放感が好きだった。
「ああ…それは私も同じだ、アムロ。この生活に不満はないが…私も無性に宇宙に上りたくなる。物足りないのかもしれんな…」
「貴方はずっと戦場暮らしだったからな…懐かしいのは解るが、戻りたい?」
伺うように覘きこむと、シャアはふと微かに笑って首を横に振った。
「……いや、それはない。私が宇宙に上れば、又周囲を騒乱に巻き込むことになる。ジオンの赤い彗星とキャスバル・レム・ダイクンは死んだのだ、それは私の願うところではない。
…だが……ああそうだよ、アムロ。君の言う通りだ、私はあの閃光に満ちた世界が懐かしい」
シャアは苦笑を浮かべた口元にカップを持って行くと、冷めてしまった紅茶を一口含んだ。
喉を落ちる液体は、微かな苦味をもってシャアの気持ちを代弁するかのようだった。
「すっかり冷めてしまったな。丁度いい、淹れ直すとしよう」
逆行を背負いセイラが茶器を持って出てきたのを機に、シャアは自ら紅茶を淹れ直し始めた。
さまになっている姿が可笑しいと、アムロがニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて見ているのに気付き、シャアは僅かに片眉を上げてアムロを睨む。
「何が言いたい?」
「いや?案外似合ってるな~と思って。そうだシャア、いっそのことギャルソンとかしてみたらいいんじゃない?」
アムロのとんでもない提案に、セイラは飲みかけの冷めた紅茶を噴出し、シャアは口をポカンと開けてアムロを見つめた。
その目は(何を言うのだ!)という非難に満ち溢れている。
「ア、アムロ!貴方凄い事言うのね…!」
セイラは口元をナフキンで押さえ乍ら、懸命に笑いを堪えていた。テーブル上の、ぐっと握った拳が正直にそれを物語っていた。
「だってさ、こーんなイイ男が『いらっしゃいませ』とか言ってにっこり笑ったら、女性客増える一方じゃないか?ねぇセイラさん、そう思うでしょ?」
「私に振らないで…!答えられるワケないでしょう!?…ぷぷっ」
想像してしまったのだろう、セイラが耐え切れず笑いだした。
妹の様子を憮然とした面持ちで見つめ、シャアはこれみよがしに地球の海よりも深い溜息をつく。
アムロとセイラの笑い声が、一頻り静かな湖畔と木々の間を通り抜け、風のない穏やかな湖面を渡ってゆく。
明りの灯る庭先では、眉間にくっきり皺を寄せたシャアが、無言で其々のティーカップに淹れ立ての紅茶を注いでいた。
紅茶とアップルパイの皿をアムロの前に進めると、シャアは恭しくアムロに一礼してみせた。
「…どうぞお客様。冷めないうちにお召し上がり下さい」
耳元で、低く艶のある声で甘く囁くように言うと、いきなりアムロは首まで真っ赤に染まった。
固まってしまったアムロを横目で見遣り、シャアはほくそ笑む。
「如何いたしました?お顔が朱いようですが、ご気分でも」
「…悪くない!ごめん!もう言わない!」
耳を押さえ、シャアから顔を背けるアムロの心境は。
(ななななんて声出すんだよ、シャアの阿呆!あ、あんな腰にクる声で「いらっしゃいませ」なんて言われたら、女性どころか男まで落ちるって!…態とやるってのがシャアのヤラシイとこだよなァ…!)
そおっと振り向けば、してやったりとにこやかに微笑むシャアと、苦笑するセイラ。
「お茶が冷める。冷めた紅茶は不味いぞ?」
「そうよ、アムロ。お腹空いてるでしょ?パイだけで足りないなら何か作りましょうか?」
「い、いや結構です…。ああもう、貴方って以外に人が悪いんだね、シャア」
悔し紛れに呟けば、
「おや?知っていると思ったよ、アムロ」
という何とも人を喰った言葉が返ってくる始末で、アムロはシャアに負けない溜息をつくしか術がなかった。
そんなアムロの様子を見つつ、シャアは星の海に浮かぶ月を思う。
(どうか。愛する人々が不幸な死を迎えないように。もう二度と、私の為に辛い思いをしないように)
月面に人類が進出して久しいが、古の人々が月に願いをかけたようにシャアも見えない月に向って願った。
シャアにとって初めてといっていい願いは、大切な人を不幸にしないこと。
それはすなわち、シャアが誰よりも大切に思うセイラとアムロへの愛情に他ならなかった。
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