FREE AREA1

コチラは宇宙世紀、1st・z・CCA以降など。
メインはシャア様、セイラさんと友人兼恋人のようなアムロ、シャア様の愛犬が登場してます。
基本はほのぼの、偶に年齢制限有り。温いですが一応忠告。

2

入院してから丁度1ヶ月後、無事に退院を果たしたシャアは、アムロに伴われて森の中にある一軒家に身を移す事になった。
そこは市街地からは多少離れていたが、目の前に小さな湖を臨み、野鳥の囀りが絶え間なく聞こえる閑静な場所にあった。
空から落ちる人口太陽の光は、樹木の枝をすり抜けるうちに柔らかくなって降り注いでいる。
アムロの運転する車に乗り涼やかな風に吹かれていると、入院中に聞いた自分の過去が、どこかの小説でもあるような錯覚を起す。
それくらいに現実味の薄い話ではあった。
しかし、身体が、脳が、モビルスーツの単語を聞く度に反応するのだ。
動かない四肢が電気ショックに反応するかのように、指先がピクリと動き脳内に宇宙が広がる。
そして懐かしい故郷を恋うが如く、胸に郷愁が満ちる。
一度それをアムロに伝えると、

『やっぱり貴方はスペースノイドなんだね、覚えていなくとも身体は宇宙へ還りたがっているんだよ』

と苦笑されたのだった。続けて、

『でも、もう二度と戦いに身を置かないでくれ…二度も三度も貴方を撃墜したくない』

俯く瞬間垣間見えたアムロの表情は、見る側の心が痛むような悲痛なものだった。



「何故君はここまで私を救おうとする?今迄の話からすれば、ほとんどの時間を敵としていたのではないのか」

運転席でハンドルを握るアムロに、疑問に思っていたことをぶつけてみた。
真直ぐ進行方向を見据えたまま、淀みなくハンドルを捌きながらアムロは応える。

「…何故なんだろうな…俺にもよく解らない。けどあの時、貴方からの通信が途切れて呼んでも反応が返らなくなった時、貴方を失ったら自分も死ぬんだ、と思った。良くも悪くも今の俺が存在するのは貴方がいたからだ。赤い彗星が存在しなかったら、俺も存在しなかったと気付いた。そうしたら居ても立ってもいられなくて、貴方のポッドを摩擦熱から護ることだけしか頭になかった…」
「私を憎んではいたのではないのか?」
「今の俺にそんな感情はないよ、でなければ助けてなんかいない」

最後の言葉だけしっかりとシャアの蒼い眼を見つめ、アムロはきっぱりと言い切った。
アムロの真剣さがシャアの胸にも伝わって、今度はシャアが苦笑する番だった。

「私は…大層な果報者のようだな、アムロ君。だが、さっきの言い方ではまるで愛の告白のようだ、気をつけたまえ」
「へ?愛…?どこが…?」

素っ頓狂な声を上げるアムロを、シャアは笑ってからかった。

「私を失ったら自分も死ぬんだ、と言ったではないか?それは女性に使う言葉ではないのかな、ん?」

シャアの蒼い眼が、イタズラを仕掛ける少年のようにキラキラと輝いている。
指摘された言葉を頭で反芻するうちに、アムロは自分の言葉の意味を理解した。
シャアの言う通りだった。
言い換えれば、『貴方がいなければ生きていけない』という反語だからである。
自分の言葉の意味にアムロが赤面すると、面白そうに見守っていたシャアが声を立てて笑う。

「シャア、誤解だ!俺はそんな意味で…!」
「解っているよ。だから私は気をつけろ、といったろう?」

くつくつと無防備に笑顔を見せるシャアを恨めし気に見つめているうちに、まあいいか、とどうでも良くなってきた。
(シャアが楽しいんなら別にいいか)
笑われようがからかわれようが、今迄見たこともない色々な表情のシャアが見られることの方が大事だった。
恐らくセイラでさえも見た事はないかもしれない、快活な笑顔。
この笑顔をセイラにも早くみせてやりたい、とアムロは思った。

「シャア、そろそろ着くよ。何時までも笑ってないで、折角景色のいいとこ探したんだから、ちゃんと見てくれよ」

アムロが促すと、シャアは笑みを引っ込めてサングラスを外して外を眺めた。

「ああ、光が和らいでそれほど眩しくはないな。態々探してくれたのか?」
「うん…尤も第一条件は静かで余り不便ではない場所、だったけどね。街中や住宅地を避けたら山の中とか森の中しかなくて。景色と治安の良さを第二条件にしたら、ヒットしたのがココだったという訳…さあ、着いた、どうだいシャア?」

フロント硝子の先に見えるのは、二階建てのレンガ作りの洋館だった。
建て主は地球の懐古趣味を持っていたのか、ご丁寧に煙突と屋根裏もあるようだった。
ゴテゴテした装飾は一切なく、シンプルで趣味の良い家がシャアの視界に映る。
視線をずらせば湖の波が光を反射して、そこだけがシャアの眼を眇めさせる光源となっていた。
時折、野鳥の鳴声が聞こえるほかは、無駄な音声が全くといっていいくらいに、無い。

「…アムロ君は私の好みが解るのか?」
「いや?多分こういうのが好きかな~っていう当てずっぽうだけど?気に入ってくれた?」
「ああ…閑静で、シンプルで住み易そうだ。気に入ったよ、ありがとうアムロ君」
「そりゃ良かった。…で、もう一つ退院祝があるんだけど」
「退院祝?」
「そう。以前話したと思うけど…」

アムロが口を開けかけた時、玄関のドアが開いて一人の女性が姿を現した。
真直ぐこちらに歩み寄ってくる女性は、すらりとした肢体を持つ妙齢の女性だった。その顔も髪も、酷くシャアに似ていた。

「彼女はセイラ・マス…貴方の実の妹、アルテイシアさんだよ。ココは貴方とセイラさんの家、なんだ」

アムロの思いがけない言葉に、シャアは二の句を告げることが出来ず、自分に向って歩いてくるセイラとアムロを交互に見遣っていた。
シャアがドアを開け車外に出た途端セイラは駆け寄って、長い間音信不通・生死不明状態だった兄に抱きついた。
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