FREE AREA1

コチラは宇宙世紀、1st・z・CCA以降など。
メインはシャア様、セイラさんと友人兼恋人のようなアムロ、シャア様の愛犬が登場してます。
基本はほのぼの、偶に年齢制限有り。温いですが一応忠告。

2

日中は家の中でのんびりしているシャアだが、それも段々飽きてくる。
ジオンの士官学校に入った頃から、シャアは絶えず動いていた。
頭の中も身体も共に、ネオ・ジオン総帥を捨てる時まで休む事を知らなかった、と言って過言ではない。
意識せずともシャアの身体は休息に飽いていた。
そんなシャアが取った行動は家事、である。
夜勤前後で眠っているセイラがいる時は控えているが、日中一人だと手持ち無沙汰で、掃除をしたり食事を作ったりしていた。
流石に洗濯だけはセイラが頑として譲らないので手を出せないが、それ以外の家事は自分でも上手いだろうと思う腕前だった。
『自分の食事くらい用意する』と言うシャアに対し、セイラは渋々妥協してくれた。
本当は全部自分で作りたいらしいが、医師という職業は暇ではない。
共に暮すようになってから二度、患者の急変で緊急呼び出しがかかったこともある。
夜中に緊張を漲らせた表情で飛び出していく妹を送り出し、シャアは自分も何かしたい、と思ったのだった。


「お帰り、アルテイシア」
シャアが玄関のドアを開けると、荷物を両手に抱えたセイラが立っていた。
「只今、兄さん。よく解ったのね、インターホン鳴らしてないのに」
「解るさ…アムロの気配も解るのだから、妹の気配なら解って当然だろう?」
「…貴方はやっぱり…まぁいいわ。これキッチンに運んで、兄さん」
ずっしりとした食材をシャアに預けたセイラは、着替える為に自室への階段を上がっていく。
その後姿を見送りながら、シャアはセイラの言葉を反芻していた。
(何がやっぱり、なのだ?私は人と、いやアルテイシアとは違うのか?)
自分がニュータイプだという事実さえ忘れているシャアの胸に、セイラの言葉は微かな痛みを生じさせる。
(何か大切なものを…思い出せそうなのだが、な。キーワードのようなものが必要なのか…?)
テーブルの上に食材を置いたままで、シャアは暫く考え込んでいたが、セイラの気配がして思考を中断させた。
やがて、エプロンの紐を結びながらセイラがキッチンへ姿を現した。
「兄さん、どうかして?」
「いや?何でもない。今朝アムロと話したんだが、来るのは7時頃になるそうだ」
「あら、じゃあ急がなきゃ。アムロ、何か言っていて?」
「愚図愚図寝こけていたのに、アルテイシアが腕を揮うと言ったら急に目が覚めたようだった。現金なものだ」
「まあ」
「来る前に一度連絡すると言っていたが…ああ、どうやら来たようだな」
シャアの言葉を追うように電話の呼び出し音が鳴り、シャアは居間へと向った。
残されたセイラは苦笑を浮かべて溜息をつく。
「自分で自覚してるのかしら兄さん…記憶が無くてもニュータイプはニュータイプなのね」
羨ましいことだわ、と一人言ちて、セイラは料理に取り掛かった。


約1時間後、暖かな料理がテーブルに並べられたのを見計らったように、アムロの車が玄関前に付けられた。
出迎えたシャアに何か箱を手渡して笑っている。
「いらっしゃいアムロ」
「こんばんはセイラさん。うわ、美味そうな匂いだね!」
「腕に縒りをかけたわよ?あら、それは?」
シャアの持つ箱に目をむけると、アムロは噴出しそうになりながらシャアを横目で見、
「シャアの好きなケーキをお土産にね」
「…確かに嫌いではないが…何故知っている?」
「以前、カミーユに聞いたんだ。宇宙に居る頃、アーガマで皆と一緒に食べたんだって?」
「そうなのか?」
「うん、そうらしい。クワトロ大尉が珍しく『私の分は?』って言うから可笑しかった、って言ってたよ。でも以外だな、貴方が甘いもの好きだなんて」
「疲れた時には糖分が一番だからな。コクピットでも時々、」
「シャア!」「兄さん!」
言葉の終らないうちに遮られたシャアが、不思議そうに二人を見遣る。
「何だ…どうかしたのか?」
「今何て言った、シャア!」
「今?コクピットでも時々、と言ったと思うが。君達が途中で遮ったのだろう?」
「そう、そうなんだけどさ。シャア、自分の言葉思い出して何か引っかからないのかい?」
「…兄さん。コクピットでの事を思い出したの?」
セイラの言葉に、シャアは得心がいったという表情を見せるのは、無意識に出た言葉だからか。
目を細め、厚い壁の向こうに存在する筈の記憶を、懸命に手繰り寄せるシャアの目の裏に、朧気な情景が脳裏に浮かぶ。
霧がかった視界が晴れていくように、シャアの脳裏が徐々に鮮明さを増していく。
見渡す限り星の瞬く闇の中、赤いノーマルスーツを来て操縦席らしい椅子に座る自分。
無重力空間は固定しないものを全て浮かせ、自分の目の前をチューブドリンクがふわふわと漂っている。
(ああ…私は宇宙にいたのか。恐らくはモビルスーツのパイロットだった…)
そう思った瞬間、何かがバチン!と弾け飛んだように目の前に火花が走った。
そして勢いよく流れ出す会話と情景の数々がシャアを襲う。

『クワトロ大尉』と微笑みながら呼びかける黒髪の士官。
豪快に笑いながらも、一人の女性士官に叱られて、子供のように大人しくなるごつい士官。
そして、海のような色合いの目をしたまだ少年兵…
「…あれは…カミーユ?ああ、それにブライト、ヘンケン艦長か…?」
眉間に微かな皺を寄せ、シャアは失っていた記憶を少しづつ引き寄せていた。
「シャア!そうだよ!」
「キャスバル兄さん!」
視線を宙に据えたままのシャアを、セイラとアムロは固唾を飲んで見守っていた。
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